TW3より飴(c05383)と花(c11349)の日記跡地。
現在の主な成分:頭の可哀相な背後。よその子ごめん。仮プレ。飴花の(背後に対する)不満。たまに遊びに来る喪(c08070)と石(c28018)。力関係はPC≧PL。
人の集まる場所へ、気持ちばかりの差し入れを持って訪れれば、まだ辛うじて記憶に残っているその人が、見つけてくれた。
いつも背中を追いかけていた人。
最後に顔を見たのは街を離れる時。
およそ、十年。久方ぶりに顔を合わせた父親は、少し、少しだけ、痩せていた。
いつも背中を追いかけていた人。
最後に顔を見たのは街を離れる時。
およそ、十年。久方ぶりに顔を合わせた父親は、少し、少しだけ、痩せていた。
+ + + + + + + + + +
「元気そうで良かった」
手渡した荷物を早々に他人に預けた彼は、ほっとしたような顔で笑う。
けれど少しだけ、ぎこちない笑顔。
何かを言いよどむその顔に、気が付かない振りをして、周囲を見渡す。
歩いた街の被害は大きかった。平和になじみすぎた街の人間は、半数ほどが集っていた。
もっとも、今は復興の為に場を離れているだけ、と言った者も含めれば、もう少し増えるのだろうが。
それでも、判る範囲で。
近所に居た幼馴染の少女は居なかった。
夕暮れ時の鐘を鳴らす老人も居なかった。
気前のいい駄菓子屋の夫人も、居なかった。
「父さん」
ぐるりとめぐらせた視線を、戻して。見つめた父親に、背丈が追い付いたのは、いつの頃だっただろう。
「母さんは」
紡いだ単語に瞳が揺れる。
あのな、と。口を開きかけたのを制するように、続けた。
「死んだんだろ?」
真っ直ぐに、問えば。揺れていた瞳が、大きく、見開かれた。
感情のない顔のまま視線を提げれば、父の手には母が普段身に着けていたネックレスがブレスレットのように巻かれている。
視線に気づいて、咄嗟に手を後ろにやったけれど、そもそも、そんな証拠じみた形見を見つけずとも、感じていたのだ。
「死んだんだろ?」
あの、儚い身内が。
この、惨状の中で、生きていられるわけがないと。
「……キルフェ、あのな」
「うん」
絞り出すような声を、受け止めて。促すでもなく、心が決まるのを待つ。
やがて沈痛な面持ちで見つめてきた父は、一度は隠したそれを、見せて。
「母さんはな、お前の事が本当に、愛しかったんだ」
「知ってる」
「だから、だからな、お前が出てったのが、本当に辛かったんだ」
「……判ってる」
端的な返答に、再び父の言葉が詰まる。
ふつ、と、にわかに感じた違和感に、薄ら、瞳を細めて、眉を顰めた。
「……父さん」
一年と、少し前。背を押されるようにして帰った我が家には、既に自分の存在は無かった。
息子を溺愛しすぎた母が、そうやって自分の心を慰めたのを理解して、失くした故郷に背を向けて。
それきり、それきり。
――その、後は?
「母さん、なんで死んだの」
突きつけた問いは、父と、自分の、心を抉った。
「ナイフで、首を切ったんだ」
一年と、少し前に。
見知らぬ青年の来訪に、彼女は不思議そうに首を傾げて。
それから、鏡を見て、気が付いた。
自分によく似た、夫によく似た、優しく笑う青年が、誰なのか。
「落ち着いたと思って、油断したんだ……すまない、母さんの事はちゃんと護るって、お前と約束したのに……」
肩を落とし、顔を覆う父の手首に巻かれたネックレスは、綺麗に断ち切られたものを、結い直していて。
切り裂かれた動脈。溢れる血を纏いながらしゃらりと床に零れたそれに、注がれ、染み込む鮮血。
乾く頃に見つけられた母に、手の施しようは無かったのだろう。
エンディングでもない情景が、目の前に映った気がして、眩暈がした。
「キルフェ。母さんの形見……持っていて、くれないか?」
父は、彼女の死の理由を知らないのだろう。
当たり前に息子の身を案じ、当たり前に妻の死を悼み、当たり前に、一度は切れた絆が元に戻るのを願っている。
「息子を忘れたまま」死んでしまった母親の形見が、愛した息子の手に渡る事を、願っている。
父は、儚くてひたすらに脆い母を、愛し守り続けてきた強い人だから。
差し出された願を受け取りさえすれば、今まで通り、過ごせるだろう。
崩壊した都市の中でも、心の安寧を手に入れられるのだろう。
けれど、差し出されたそれは、呪いじみていて。
受け取る事が、出来なかった。
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プロフィール
HN:
飴と花
性別:
男性
自己紹介:
飴:キルフェ。不機嫌なお友達
花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
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mai-maieb@hotmail.co.jp
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ブログ内のイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権はキルフェPLに、著作権は各絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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