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TW3より飴(c05383)と花(c11349)の日記跡地。 現在の主な成分:頭の可哀相な背後。よその子ごめん。仮プレ。飴花の(背後に対する)不満。たまに遊びに来る喪(c08070)と石(c28018)。力関係はPC≧PL。
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煩わしいわけではなかった。ただ、くすぐったかった。
その内慣れて、落ち着いて。馴染んでみたけれど。
けれど、やっぱり――。

+ + + + + + + + + +


「先輩、先輩!」
 華を売る店の主として随分経って。おぼろげに描いていた企画事に混ざっては、嬉々として報告事をしてくれる青年を、ゆるりと振り返って。嬉しそうに語るその話を、頷き聞いて、了承して。
 それから、ふと、首を傾げた。
「てかさぁ、君はいつまで、俺の事を先輩って呼ぶんだろうね」
 ホストとして、同じ場所で勤めて。先輩と後輩と言う関係性があったことは事実だけれど。
 今はもう、彼はホストではなく、似たような生業の店主。
 くすぐったさに慣れた頃に組織を離れたものだから、じんわりと、くすぐったさがぶり返してくる。
 そんな色々を押し込めた問いに、きょとん、とした顔をした青年は、じゃぁ、と提案を示す。
「明日までに新しい渾名考えておくよ」
「やー、まぁ、渾名でなくても、良いんだけどね」
 ただ、ただ、耳にしてしまって、気が付いてしまった。
 他の人の前では、勤め始めに貰った、源氏名のような呼称を用いていることを。
 だから、せめて、自分の前でもそう呼んで貰えればと、そんな風に、思って。
「……他の子の前では、ちゃんと名前なのになって、思っただけだし……」
「あー……ほら、だって、先輩は先輩だけど、他の人には、誰? ってなっちゃうかと思って……」
 困ったような顔をした青年に、あぁ、そんな顔をさせるつもりじゃなかったのになと、ほんのり、眉をさげかけて。
「でも、本当は先輩でも「ニア」でもなくて、本当の名前で呼べたらって思うんだ」
 続いた言葉に、目が、丸くなった。
 よぎったのは、花を借りたそれより深く。飲み込み隠してきた、月を冠する、本当の――。
「――そりゃ、「ガル」って呼ばれる事の方が多いけど……君にそれを強いるのは、何だか可愛そうな気がしてるから、せめて、「ニア」がいいなぁって、思ってるんだけどねー」
 つぃ、と。着物の袖を口元に置いて、ゆるりと視線を逸らす。
 きっとそれは、彼には拗ねたような仕草に、見えたのだろう。はぁ、と、あからさまな溜息を吐かれた。
「本当は、「ガル」って呼んで貰いたいんだろ? 俺に遠慮なんていらないし。うん、これからは先輩の事、「ガル」って呼ぶよ。決定な!」
 純粋で優しい笑顔が、そう告げるのを、ちらと横目で見て。ほんのりと頬が染まるのを自覚して、また逸らす。
「紛らわしく、なぁい? 君が平気でも、君の周り。ホストサイドの知り合いの方が多いから、別に、「ニア」で、良いんだよ……?」
 ぽそぽそ。零すように告げれば、なんで、と言うように、ほんの少し覗き込まれる。
「俺がそうしたいって思ったから、そうする。むしろ、もっと早く気付けばよかった」
 青年にとっては新しい呼称を、繰り返し、繰り返し。納得したように頷いて、彼はまた、笑う。
 あまり自分の事を主張しないから。言って貰えて嬉しかったと、笑う。
 その顔があまりにも、あんまりにも、眩しくて。
「……うん、ありがとね」
 そう言って、照れた顔を逸らすのが、精一杯だった。

 くすぐったいと思っていた呼称が、改められて。
 ふくふくと心の内側が温まるのを感じて。
 ――けれど、やっぱり、くすぐったいと思うのは。
 多分、彼の純粋さが、温まった内側を、知らせるように擽るからなのだろう。
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飴と花
性別:
男性
自己紹介:
飴:キルフェ。不機嫌なお友達
花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋

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