飴さんが、語りたがらない親友の話。
今でも女々しく引きずっているけれど、だけれど、決して、善人ではなかった人。

戦闘経験は飴さんよりも上。
出会った時はエンドブレイカーではなかったけれど。
もう一人居た、友人の家族が殺されたのをきっかけに、スカードのエンドブレイカーになった友人のガーディアンとして覚醒。
飴さんがイノセントであったがゆえに日々エンドブレイクに奮闘していた事を初めて理解して。
あぁ、出会ったきっかけもエンディングだったんだろうなと感謝したけれど。
同時に、知っていたはずの友人の悲劇を止められなかったことを、見当違いに憎んで。
表面的には穏やかに好意的に接しながら、あからさまに辛辣な態度を取り続けてきた。
飴さんの中に好意と罪悪感があるのを見越して、決して離れない距離で、決して踏み込ませない距離で、じわじわ、真綿で首を締めるように心を折ってきた。

「やだなぁ、キルフェ。判ってるくせに」

口癖で、止め。
どうしてそんなことを言うの。
どうしてそんなことをするの。
疑問も質問も許さない。
答えも言わない。
判ってるでしょう？

大嫌い。憎くて憎くてたまらない。
だけれど、だから、大好き。
だってそうやって受け止めてくれるから、僕はあの子の前では今でもまともでいられる。
何もぶつけずに、ただ見守ることができる。
感謝してるよ、愛おしい。

飴さんが幼少期からヤンデレママの相手に慣れてたせいもあって、耐性があったのが災いしてた。
何しても折れないから、どんどん酷くなってって。
最終的には、結局自分が折れて、マスターと無理心中。
叶いもしない相手と敵対して、わざと死んだ。
飴さんは一般人の瞳越しにそうなることを知っていたけど、本人に止められた。物理で。
気を失わせて、動けなくして、最期なのを理解して、「またね」って笑顔で死にに行った。
踏み込ませないし関わらせないけど、忘れさせようともしない。
そんな、立派なマスカレイド予備軍でした。



だから。
だから、腹が立った。
だから、守る気なんて一切なかった。
だけど、死なせる気も一切なかった。
また、やるなら。
今度こそ殴る気でいるので、御覚悟を。