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TW3より飴(c05383)と花(c11349)の日記跡地。 現在の主な成分:頭の可哀相な背後。よその子ごめん。仮プレ。飴花の(背後に対する)不満。たまに遊びに来る喪(c08070)と石(c28018)。力関係はPC≧PL。
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 覚えていなくて、道が判らない。
 だからいつまで経っても辿り着けない、場所。

 ――覚えていたくなくて、道を忘れた。
 だから、いつまで経っても、辿り着けない、場所。

+ + + + + + + + + +
 赤い花一つ、借りてこようかと思ったけれど。
 その花に包まれて安らかな顔をしているのを見ると、風に煽られて帰ってこれなくなる迷い花を作るのは気が引けた。
 だから代わりに、間近で見たそれを瞼の裏に焼き付けて、時々、瞳を伏せて思い出した。
 記憶は、曖昧なもの。
 都合のいいように、書き換えられるもの。
 ならば、いつまで経っても忘れられないと思っているこの顔も、都合よく書き換えられた虚像?
 確かめるために。口実が、いつまでも超えられなかった境界を越えた。

「……変わってねーのな……」
 そこは、記憶している限り、平和な場所だった。
 争いどころか、諍いすらもない、平穏な街。
 一番高く街を見下ろせる塔は、錆びた鐘がぶら下がっていて、今も変わらず夕暮れ時を告げる。
 いつかの時、少しでも長く子供たちを遊ばせたいと、ほんの少しずつ、鐘を鳴らすのを遅らせていた老人が、子供たちを危ない目に合わせる害悪とみなす女が居て。
 美味しいご飯が冷めちゃうから、帰る時間はいつも通りがいいな。そうやってねだった少年が、いた。
 以来、老人は日の入る頃には鐘を鳴らし、家路に着く子供たちの背中を嬉しそうに眺めるようになった。
 ステルスを使えば、長閑な平和に興じている街の人間に気付かれることはなくて。
 影から影へ。隠れるほど露骨でもないながら、人目を避けてゆるりと歩く、商店街。
 外れにある酒場には、古びた看板がぶら下がっていて、日の落ち始めた街の中、一足早く明かりを灯して仕事帰りの男たちを呼び寄せている。
 いつかの時、遊び疲れた子供たちに甘い果実のジュースを振舞っていた主人に、酒と煙草の匂いが充満する店に子供を招くなんてと怪訝な顔をする女が居て。
 外で遊んでる子供ばっかりなんだし、飲ませてやるのも外にしたらどうだ。そうやって提案した青年が、居た。
 以来、主人は店の近くの公園にパラソルを開き、集まってくる子供たちに同じように飲み物を振舞うようになった。
「……変わって、ねーのな……」
 自嘲が、零れた。
 入り組んだ路地を駆け抜け、日の下で遊ぶ子供たちの姿は、自分が知っているものとは違うけれど、どこか面影があるようにも思える。
 昔は遊び友達だった誰かと誰かが恋をして家庭を作ったのだろうか。
 だとすればそれは……それは、誰だろう。
 何時からだったか、友人の顔と名前が一致しなくなっていた。
 何をしていても、誰と話していても、ちらつくのは、マスターのためにと無理な心中をして死んだ、親友の顔ばかりで。
 自分に思いを告げた少女の名前を呼び間違えたことで、限界を感じて飛び出した。
 そうして、それきりにする、つもりだったのだけれど。
 表通りを抜けて、路地を三つ。横切った先に佇んだ、小さな家。
 さすがに建物自体は古くなっているようだったが、なんら、代わり映えのない、かつての我が家。
 懐かしいと、そう、思った。
 ステルスを解いて、一歩。
 踵を返そうとするのを、焼き付けた花を思い起こして踏みとどまる。
 扉に伸ばした指先が震えているような気がしたけれど、見ない振りをして。
 こん、こん。呼びかける意図とは裏腹に、どうか聞こえませんようにと祈りながら、扉を小突いた。
「はぁい」
 柔らかな声が響いて、ぱたぱた、小さな足音が向かってきて。
 逃げ出したくなる意思とは、裏腹に。足は竦んだように動かなかった。
 扉を開いて、出迎える。一人の女性。
 ふんわりとした白髪に、果実のような明るいオレンジ色の瞳。
 少しだけ皺の増えたような気はするけれど、儚げな印象は今も変わらない。
 記憶の中にあるとおりの、その人は――。
「どちらさま、かしら」
 こちらを見上げながら、小首を傾げて、そう、尋ねた。

 ――ふと、何かが抜け落ちていくような、感覚に、晒されて。
 自然と浮かんだのは、この数年、ずっと忘れたつもりで居た、その場しのぎの愛想笑い。
「すみません、友人の家に似ていると思って、つい」
 鐘突きの老人にねだった少年は、酒場の主人に提案した青年は、きっと、大人になった頃にはこうやって愛想良く丁寧に、言葉を紡いでいたはずだ。
「あら……でしたら、主人の?」
「いえ、もっと若い……そうですね、俺と同じくらいです」
「まぁ、だけれどうちには、そんな方は、居ないのだけれど」
「いつから?」
 偽りに偽りを重ね始めれば、もう、何も怖くはなかった。
「いつからも、何も……うちには、子供は居ませんから」
 困ったように笑った女に、「勘違いだったようで」と侘びを告げて、踵を返す。
 訝るような視線が背中に注がれていたが、気にはならなかった。
 予想は、できていたはずだ。
 我が子を溺愛しすぎて、我が子の為にと他人の血を流すことさえ厭わなかった母親が、その我が子が手元から離れていくことを、果たして享受できたのだろうか。
 答えは、「No」だった。ただ、それだけのことだった。
「あんたの中に、俺はもういねーのな」
 記憶は、曖昧なもので。自分の都合のいいように、書き換えられるもので。
 だけれど、何故だろう、幸せな心地だった。
「さよなら、母さん」
 多分、彼女の顔は今までどおり、何時までも忘れられないままだろうけれど。
 互いを縛るものはもう何もないのだと、ようやく、ようやく、理解できたのだから。









飴さんのアクスヘイム編は、ようやく終了しました。
吹っ切れたので、これからはもう少し、少しくらい、素直になるかもしれません。
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プロフィール
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飴と花
性別:
男性
自己紹介:
飴:キルフェ。不機嫌なお友達
花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋

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