それがまるで、遠くから呼ぶ声のような気がした。
　振り返り、けれどそれらしい姿はなく、小首を傾げて。
　振り仰ぎ、不意に頭上を横切った影に、目を丸くした。

　すとん。男の履く硬質な靴の踵が、それでも音を立てずに地へと辿りついて。
　軽やか。そう称すれば事足りる所作で、目の前に降り立った。
　彼にそうされる理由が、特に思い浮かばなくて。考える意味を含めて、また、首を傾げて見せた。
「よう」
　右手を軽く上げて紡がれる、一言。それはただの、挨拶で。
　傾いでいた首を元に戻して、同じ仕草でへらりと笑みを返した。
「なにしてんだ、こんな所で」
「そらぁ、こっちの台詞。普段見ん姿に呼び止められて、これでも驚いとるんよ？」
「そうかい、そりゃ――悪かったな。急ぎか？」
　言葉を繋げる隙間に混ざった、逡巡の沈黙。表情こそ幾ばくの変化もない笑顔のままだが、肩を竦める所作に、言葉通りの気持ちが込められていた。
　ささやかな気遣いが、彼らしい、と。胸中で密かに思う。
　本人に告げればきっと茶化されるだけだから、決して、言わないけれど。
　そうして、ゆるゆると首を振って、問いに対しての否定を示した。
「ぜーんぜん。ただの散歩やしね」
　梅雨のじっとりと暑い空気に、外の風が恋しくなって。
　まぁ結局はじりじりと照る日の光に参る羽目になったわけだが、そんな最中のこの偶然は、十分すぎるほど有意義な時間を齎した。
「今日は、暑いね」
「まったくだ。こうも張り切って働かれると、こっちの働く気が削がれちまう」
　他愛もない話に、心地の良い冗談。くすくす、笑う声を重ね交わせば、自然と気持ちも躍った。
「ねぇ、急ぎ？」
　先に尋ねられたのと同じ言葉で尋ねれば、暫し、思案する間を挟んで後、肩を竦められた。
「生憎と、持て余すほどの暇を買ってくれる相手も居なくてな」
「あはっ、何言うてるん。引く手数多のくせして」
　けらけら。素直に笑って、それじゃぁ。期待に満ちた、満面の笑みを浮かべる。
　子供じみた顔で数歩、歩み寄って。良く似た目線を、まっすぐに、見つめて。
「今日はうちがその暇買った」
　遊ぼう。手を引くことはしないけれど、ついてきてくれる事を期待して、ぱたぱた、小走りに駆けだす。
「しょうがないな。――今日だけだからな？」
「ふふ、ケチ」
　照りつける日差しは相変わらず熱いけれど。
　風を連れて歩く午後は、この上なく、爽快だった。



（｀・ω・´）+
再々ぐらいのお知らせ告知のご報告。類似語だとか言わない。
まいさんがたまにたまにぽつっとやるよその子ごめんは、プレイングメール（←）とかイベシナ妄想補完とか一緒ピンの妄想補完とか後全くの思い付きとか様々ですが、
基本、名前は書きません。
だから、あれ、これひょっとしてうちの子のつもり？ぐらいでさらりと眺めていただけると幸い（*ノノ）
ただの言い訳ルート保持です←
職場のパソコンはネットは繋がらないけどメモ帳は好きに使えそうなので夜勤の仮眠時間にこっそりもちゃもちゃ。
仮眠室にすし詰めは苦手なのでコンビに時代の名残で机突っ伏してる最近（´・ω・｀）
折角なので時間を有意義に使ってみよう計画（｀・ω・´）←