肩を並べながら、目をあわせることもしない青年二人と、それを当たり前に許容している少年一人。

　鞭の音が小気味良い。
　同じようにしなるそれは、けれど、右と、左と、それぞれでほんの少し違う音を奏でていた。
　快活な少女のように微笑む少年が放つ星霊が、気まぐれに掴めない表情をしている青年の星霊と戯れて、飛んでいく。
　笑みを交し合う彼らを見届けてから、低いヒールを鳴らして前へ、駆ければ。
　どっ…がっ、がっ――！
　鎧を纏った仮面の騎士に、残酷なほどに足を叩きつける青年。
　ちらりと見やった横顔は、後ろの二人とはまるで対照的に、歪んでいて。酷く、苛立っているのが判る。
　翳した武器を振り抜いて。止めを与え、振り返る。
　――名残だけを置いて、その表情は消えていた。
「相っ変わらず、おっかねーなあ」
「キルちゃんかっこいー☆」
　はしゃぐ声、にも。冷めた顔でため息をつくだけ。振り返りもしない。
「不思議」
「……は？」
　傍らで呟いた声には、反応。それもまた不思議なこと。
「お友達じゃ、ないの？」
「……そりゃ、愉快な勘違いだな」
　くつり、と。皮肉げに笑って、それ以上の質問を阻むように踵を返す。
　合流しても、二言、三言、短い会話だけを交わして、それきり。
　それなのに、彼らの周りには他人同士のそれとは違う空気があった。
　両手で、輪を作って。彼らの背に翳してみた。
「……不思議、ね」
　肩を並べていながら目も合わせない青年二人。
　それを当たり前のように許容している少年一人。
　笑みを交し合う青年と少年。
　一人、違った顔。
　まるで、避けようとしているかのような態度。あからさま。
　それでも、彼らの背には輪が合った。
「仲が良いって、素敵」
　呟いて、後を追う。
「ねぇ」
　同じように振り返る姿は、微笑ましくさえ思えて。
「また、一緒に来てくれるかしら」
　他人のまま、もう一度。
　眺めていられたら、きっと、幸せなのだろう。



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むしゅめ視点。もうほぼ割れてるので気にしないことにした。
タイトルは『お前ら仲良いな。』だと思う。←