大きく小さく、動く人の波。
「ガル、こっち!」
ふらりと目移りしていると、不意に、呼ぶ声が響いて。
両手一杯に食べ物を抱えた姿に、誘う声が全部聞こえなくなるほどの愛おしさを覚えた。
「やぁ、今日は本当に良く食べたねぇ」
まだまだ賑わうモザイク模様の散策路を振り仰ぎ、人もまばらに落ち着いた水路脇のベンチで、男はほぅと息をついた。
その手にあるのはホットワイン。程よく残ったアルコールに、スパイスの香りが混ざり合い、ふわり、五感から体を暖めた。
隣には同じものを手に、満足げに笑う青年の姿。
あれも食べたしこれも買ったし、後悔のないようにと指折り確かめ、うん、と頷いてはワインに口をつけていた。
「帰り際にもう一回くらいあのスイートポテト買えんかなぁ」
「あぁ、それはいいね。もしくはパンと串焼きを拾っていくのもありかな」
「そないなこと言うてたらまた腹減ってくるなぁ……あんだけ食べたんに、恐ろしい……」
冗談めかした会話を重ね、ふと、陽の傾き始めた天井を仰いで。男は少しの思案の後、身を屈め、青年を覗き込んだ。
「ね、さっきはありがとう」
にこりと微笑んでの礼に、一度、首を傾げる青年。
はて、何をしたかと言う様な顔にくすりと笑い、ほら、さっきだよ。と繰り返す。
「俺がはぐれそうになってた時」
「あ、あぁ~……や、あれな、むしろわいの方がはぐれたと思って焦ってたんよ」
買って振り返ったら居らんねやもん、と、けらけら笑う青年に、ふふ、と笑みを返して。
こっそり、心の中だけで、繰り返す。
――ね、今日は、ありがとう。
誘ってくれた嬉しさも、だけれど。
男友達として遊んでくれたことが、嬉しくて、嬉しくて、たまらなかった。
それを口にするには、どうにもこうにも、常日頃のからかいじみた態度が過ぎていることを自覚してはいたけれど。
「また、次の都市でも遊ぼうな!」
不意の笑顔と台詞に、うっかり、見透かされたような気がして。
ぐい、と、思わず下げた帽子は、照れ隠し。
「うん、是非」
それでも、微笑むときには、ちゃんと、顔を見せて。
半分残ったカップを、思いついたように重ねた。
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いまさら感半端ないのをいいことに全力で捏造^^←
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花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
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