膝を抱えて座り込み、逆さまに切り取られた空を眺めながら、ぽつ、ぽつと口ずさむ旋律。
「それ――」
「ぅん?」
かけられた声に口を噤めば、随分と静かな空気に気がついた。
視線を正面へ戻し、小首を傾げて尋ねる意思を向ければ。
珍しく柔らかなソファに腰を下ろした男の、さらに珍しく眉間に皺の寄っていない、不機嫌よりは興味の強い顔に、見つめられる。
一瞬絡んだ視線は、けれど一度、思案めいた所作で逸らされて。
また、じっ、と見つめられた。
「なんて、歌」
問いに、目が丸くなった。
ただただ、意外だった。
「……気に、なる?」
数度瞳を瞬かせ、ゆるりと作った笑みで、問い返す。
それだけで、胸中にある『物凄く意外な質問だ』という感想は、伝わったらしい。
彼らしい、不機嫌を示した表情は、どこか拗ねたようにも見えるが、睨むように変わった視線は、逸らされなかった。
「別に、曲自体は気にならねーよ」
「は、ってことは、なんや気になることがあってんねぇ。なんやろ」
応えてくれるとは思っていないから、独り言めいた呟きを添えて、思案にこちらが視線を逸らす。
肘掛に腕を立て、頬杖ついて、一頻り。
けれど答えが出る前に、小さな、ため息一つ、耳に届く。
「珍しいだろ」
「ぅん? うん、そらぁ、そんな風に聞いてくることなんて滅多にないやんね……」
「違ぇよ。あんたが、歌ってんのが、だよ」
また、目が丸くなった。
当然のような顔で告げられた台詞に、思わず、その顔を凝視して。
立てっぱなしの腕に、今度は口元まで隠すように顎を乗せて、思案。
「…………言われてみれば」
「なんだよ、無自覚か。つーか俺は半分、ここで、っつー意味で言ってんだけど、そんな真剣に考え込むほど覚えあんのかよ」
「やたら饒舌な君に違和感を覚えないでもないけど、確かに思わず考え込む程度には身に覚えがあったよ」
抱えていた足を降ろし、組んで。どこか偉そうな所作で皮肉を投げれば、くつり、笑われた。
「そーかい」
満足げな顔で笑った彼は、それ以上何を言うでもなく席を立った。
「ねぇ」
早々に部屋を去ろうとする背中に、どこか不満を湛えた声を投げれば、視線だけが振り返る。
「さっきの曲、なんだか教えてあげようか」
「別にいい」
興味のなさそうな声がそう告げて、ポケットにあるだろう飴を探す。
そうして、かさり、紙包みを解く音が響くだけの間を開けて、もう一度、皮肉めいた、それでも満足げな笑みが、振り返る。
「どーせ『俺の大事な友達が歌ってた曲』だろ?」
今日は、驚かされてばかりだと。素直に喉の奥で唸った。
「……ご名答」
「一年見てりゃ、判るっつの」
飴を口に含んだ声は、少し笑っていた。
そうして今度こそ立ち去った背中に、暫くは、最初の彼と同じような、拗ねたような視線を向けていたけれど。
「……一年も、見とってくれたんやねぇ」
他人に対しての興味と関心を意図的に削ぎ落とした彼が、それを拾い上げた理由と切欠を思い、微笑ましさに笑った。
他人に対しての態度と様相を意図的に覆い隠した自分が、それを脱ぎ捨てた理由と切欠と、それはきっと、同じだろうと。
「――……♪」
名前も知らない歌は、どこか懐かしい音色を伴って、静かに、静かに、真白な部屋に響き渡った。
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踊るけど、歌わない。
声は中性。だけど、張ればバレるから。
少し高めを意識して、囁き笑うだけ、だった。
プレに書いたことだけど、歌うガルさんを見て、少し違和感を感じて、理由を真剣に考えた結果
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花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
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