わぁきゃぁ。たのしかったー!
遅くなってごめんなさい。週末に仕留められなかった(、、)
えとえとえと、前もやってた、読む前の注意書き。
大部分が自己満足で出来ています。
アビリティはかっこよければいいかな判定。
キャラの活躍具合に偏りあったらごめんなさい;
なっげぇよ^p^←
字数制限ないと思ってフリーダムにやりすぎたw
後でギガンティア連行するのでお覚悟をー((((*ノノ)
●街の傍ら
季節のせいか、それとも、街の雰囲気がそう感じさせるのか。吹き抜ける風はどこか冷たく、乾いていた。
埃っぽい空気に薄らと瞳を眇め、見渡した光景に、黒ノ咎猫・キーストア(c07587)は一人ごちる。
「枯れてんなあ……」
小さな小さな呟きに、言葉による同意こそ返らなかったものの、幾人かの視線が、似たような感情を抱いているのは見て取れた。
そんな中でも、明るく楽しい雰囲気を形作っているのが、変化狐・ミヤビ(c06299)とひだまりのゆりかご・ドロシー(c03427)である。
見知った顔が多く、久しく合わせたそれらとの共闘にわくわくしているミヤビとは反対に、初対面が多く、きょろきょろと興味深げにしていたドロシーは、紫花流紅・ユーフェリア(c11719)の傍らに佇む妖精の姿をきらきらの眼差しで見つめていた。
「わ、わ、かわいいな、いいな」
「ふふっ、ありがとう。プラムというんだ、今回は一緒に頑張るから、宜しくね?」
大きな瞳に見つめられ、少し気恥ずかしそうにユーフェリアの影に出たり入ったりを繰り返している妖精に微笑みかけ、ふわり、柔らかな笑顔をドロシーへと向ければ、少女ははわわーと嬉しそうに頬を緩ませる。
「賑やかねぇ。あの子、ドリー? の方が、キルフェの知り合いで~、ガルに似た♪ 美人のユフィは、やっぱりガルの知り合い?」
「そ。ユフィ……ユーフェリア、ちゅう頼もしい子ぉやよ」
初めての顔合わせに喜色を示すのは彼らだけではなく。踊る光影・ロゼリア(c05854)もまた、それぞれの顔と名前を聞き確かめ照らし合わせながら、挨拶を送っていた。
と、その視線が、不意に後方を振り返る。
「それじゃあ、あの子は?」
ロゼリアの問いに頷き答えていた花愛人・ガルデニア(c11349)と、対照的に殆ど無視に近い相槌だけを返していた飴色鼠・キルフェ(c05383)が、釣られるように振り返れば。
「ろ……」
「おや」
視線の先、目に留まった姿に反応したのは、ガルデニアと、ユーフェリア。
こそり、そわそわとしながら壁に隠れ気味にしていた淡桃色の少女の姿に、彼らの表情が綻んだ。
「メイ、きてくれたんや」
手招きながら名を呼んで。こくりと頷いて応じた少女――夢幻夢想・メイ(c02778)は、酒場の席では声をかけそびれた面々を見渡して、ぺこり、軽く会釈をした。
「……メイ・デイドリームという……宜しく、お願いします」
知らない人間と対峙する緊張に強張る顔を、袖に隠れた指先でそっと隠しながらの挨拶に、既知の者は微笑ましげに笑みを深め、そうでない者は、それぞれに応え返し。
和やかな雰囲気のまま横切った街の、果て。
紛いなりにも街と名の付いていた場所を抜けた先、キーストアが枯れていると評した情景よりもさらに殺伐としたその場所は、不思議と静かに感じられた。
ぽつり、ぽつりと立っている、冬に備えるように葉を散らした木を一つ一つ見つめ、ミヤビは空へとファルコンを放つ。
同時に、警戒を込めて傍らに寄せたコヨーテを見て、ほんの一瞬笑みを湛えた夢見鳥・トエリカ(c14560)もまた、棍を握り締める手に少しの力を込めた。
「まだ、もう少し先かしら」
「ん、せやね。ここよりはまだ岩場に近いとこやよ」
とはいえ、敵の縄張りに踏み込むのは、そう遠い先でもないのだろう。ぴりと張り詰める緊張に、高揚は誘われて。気合をあらわすかのように、風追い吟遊・ソオラ(c06146)は、パシッ、と己の手のひらに拳を打ちつけた。
「んっし、すっきりさっぱり全部片付けて、貧困街のみんな安心さしたろ!」
弱気を護るこそ騎士の務め。
そうと己を鼓舞しつつ、脳裏に掠めるのは、ここへ来る一つ前の都市でのあれやこれ。
そう、どちらかと言えば観光気分を満喫しまくった、あれやこれ。
「……べ、別にアクエリオ居る間仕事サボってた分の埋め合わせとかやないで?」
言わなくてもいいことを言ってしまうあたりは、きっとソオラの良くも悪くもソオラらしいところで。
それを耳聡く聞きとめたガルデニアが、物凄く良い笑顔でソオラをつつきだすのもまた、彼らしい、ところなのだろう。
「ふぅん、ふぅーん? ほんまにそうなん?」
「ホンマホンマ…って、あ、ちょ、疑うたやろ、ちゅうかその目は疑うてるやろー!」
「べぇっつにぃ? ソオラがそう言うんならそうなんやろねぇて思ただけやよぉ?」
「てか、ソオラ、アクエリオでそんなにサボってたんだ?」
シシッ、と意地悪く笑ったミヤビの指摘に、うぐっ、と言葉を詰まらせ、確かに遊びにはたくさん行ったけどそれなりに働いたしちゃんとしてたし……と、ぼそぼそ呟くソオラ。
きゃいきゃいとはしゃいだ様子を見せる一角を、どこか呆れたように見つめ、けれどすぐさま視線を逸らし、砂茨・フラウゲイル(c19574)は小さく吐息を零して集中した。
ここにはいない少女の身に起こるはずだった終焉。それそのものに対して特別何を思うでもない。同情も、憐憫も、何も。
それでも、奪う奴は嫌いだった。
嫌悪こそがこの場にいる理由だから。フラウゲイルの視線に、迷いは無かった。
●飢えた者
――くるり、と。中空を旋回し、ミヤビの元へファルコンが降りる。
はっとしたように周囲を見渡した彼の視線を導くように、コヨーテが唸り、敵の存在を訴えた。
応えるように、岩場から飛び出してきた影に、真っ先に動いたフラウゲイルの手元から紫煙の色を灯した弾丸が放たれる。
銃声は合図となり、前衛を勤めるべく二人のスカイランナーが地を蹴った。
弾丸に打ち抜かれた仲間の脇を抜けて襲い掛かってくる狼に、容赦の無い攻撃が加えられるのを見て。むん、とドロシーは気合を入れた。
「よおおし、ドリーも張り切っていくよー!」
白い体毛に覆われたドロシーの腕は、駆け出した先で狼の痩せた体躯を抉る。けれど肉らしいものに触れたのは、一瞬。がちり、すぐさま硬い骨に行き当たるその感覚は、狼達がいかに満たされていないかを物語るようで。切なげに眉が顰められる。
――が、それも、一瞬だけだ。
「いっぱいお腹空いてたんだね、ごめんね」
ぱちりと一つ瞬けば、眦に滲んだ気のする涙も払われる。
同情して手を緩めれば、苦しいのが長引くだけ。早く終わらせる事が、彼らのためになると、ドロシーは信じていた。
聞きとめたのか、そうでないのか。定かではないけれど、一瞬だけ、キルフェの視線が彼女へと向けられて――それだけ。
感化される義理はないとばかりに、くるり、トンファーを回し、彼はただ疎ましげに、狼の顔面にそれを叩き込んだ。
「ソオラ、ガル! 横からも、来てるわよ!」
狼の脳髄を強かに揺らし、そのまま軽やかに岩場を跳んだロゼリアが、くるりと宙を旋回する最中、広い視界の先で蠢く幾つもの影を捉え、告げる。
応え、傍らの岩壁をなぞるように振り仰いだソオラへと、頭上から飛び掛ろうとした狼は、炎を纏った突きに打ち据えられ、瞬く間に燃え散った。
己の手元で燻ることなく熱を放つ火剣を握り、ソオラは一帯へ響き渡るほどに声を張り上げた。
「っしゃ、こっちは任せとき! ガル、一丁派手にかましたろやないか!」
勿論、と頷いたガルデニアは、大鎌を握り締め、ちらと振り返る。
後衛を担う者らを順に見渡せば、ふと、視線の合ったユーフェリアが、こくりと優しく頷いた。
「こちらを気にしなくても、平気だよ。思う存分、暴れてきてね?」
頼もしい言葉に、傍らの妖精もまたこくこくと力一杯の頷きを添える。見つめて零れた笑みは、前へと視線を戻す最中で妖艶に塗り替えられて。
「そんなら、遠慮なく」
次々と現れる狼へと果敢に飛び込んでいくソオラの背を、追いかけた。
前へ、横へ。散開する仲間の背を見送れば、後は、後ろ。ユーフェリアは油断無く巡らせた気配で見つけた存在へ視線を向け、同じく気取った様子のメイへ、注意を促した。
「くるよ。気をつけて」
「ん……大丈夫。――ルカ」
ぱちん、と。メイの手元で広げられていた扇が閉じられて。とん、とん、と彼女の肩から腕を駆け下りていったバルカンを、差し向ける。
「悪い子には、お仕置き」
狼へと向けられた扇の先から飛び出して、幾つもの炎を打ち据えるバルカン。
体躯を焼く炎熱に唸り悶える狼へ、さらにユーフェリアの元より放たれた無数の妖精が武器を手に襲い掛かり、切り裂いていく。
前線を補佐するようにけしかけたヒュプノスを見つめていた視線をちらりと向けて、キーストアはかすかに孕んだ笑みのまま、何の気なく呟く。
「ガルんとこのは、また鮮やかで……容赦ねえな」
それは勿論、自分とその顔見知りにも言えたことだけれど。
専ら好戦的な身内とは対照的なほどに穏やかな印象を持つ彼らには、どこか不釣合いにも見えるのだ。
きょとりと目を丸くし、顔を見合わせて。不意に、ユーフェリアは苦笑した。
「可愛そうな気は、しないでもないよ…? けど、人に害を為す子を見逃すわけにはいかないからね」
「女の子、助けるため……これが、私に出来ることです、から」
返された、真剣な……思いのほか、真面目な言葉に。思わず、キーストアは肩を竦める。
放ったファルコンが旋回して戻ってくるのを指先で受け止めながら、トエリカもまた、柔らかな声音に真摯な思いを篭める。
「……皆、視えた悲劇は、放っておけないもの」
貴方も、そうでしょう?
言葉の内にそう尋ねられているような気がして、「さあな」と曖昧に笑って、顔を背けた。
「……意気込むのは、勝手だが…余所見はするな」
告げられたフラウゲイルの注意は、一時とは言え共に戦う身としての本音であり――護るよりも、倒す意志の強い身としての、気まずさゆえの口出しか。
語るを好まぬ彼の心内は定かではない。交わることなく逸らされた視線は、群れを屍へと変え続ける前線へと向けられ、逆手に持ったナイフが組み上げる刃の竜が、仲間の背に食らい付こうとする狼をまた躯に変えた。
と、そこで、すん、と鼻を鳴らしたミヤビが、眉を顰め、呟く。
「結構きっつ……アンデッドも、出てきたみたいだな」
声に向けた幾人かの視線の先、かたかたと骨を鳴らす寒々しい姿で、アンデッドと化した狼が姿を見せた。
撒き散らすのは腐臭だけでなく、申し訳程度に残った腐肉まで。その様に、眉を顰めるのは何も、ミヤビだけではなかった。
「アンデッドは、んー、お任せ♪」
「んっし、任せといて!」
体汚れるしなぁ、と口元で呟いたロゼリアの言葉は、きっと聞こえていたのだろうけれど。ミヤビはそれとは違った理由で、自ら狙いをアンデッドへと定め、罠をばら撒く。
長く永くエンドブレイカーとして鍛錬してきた故に、終焉に対しての刃に迷いは無いけれど。
同じくらい永く自然と共に生きてきたミヤビにとって、命ある動物に武器を向けるのは、躊躇われたのだ。
がちん、と。アンデッドを挟み込む罠の音に、痛々しい鳴き声は混ざらない。それを、救いというかのように微笑んで、ミヤビは足元で鞭を打ち鳴らした。
「さ、がんがんいこうぜ!」
努めて明るく紡がれる声は、薄暗い紫煙を纏い、枯れた装いを見せる空間にさえ、彼の愛する自然の息吹を感じさせる。
真っ直ぐな眼差しを向ける先へ、弾ける電光を帯びた鞭を振るうには、まだ、早い――。
●前へ、前へ
飢えて、痩せ細り、仲間を食らってまで生き続け――死んでなお貪り続けた彼らの執念たるや。倒せどもそう簡単には朽ちることの無い固体が多く、さして広大でもない岩場は、すっかり狼に埋め尽くされていた。
どこへけしかけたものかも見分け辛いほどの視界に、トエリカは仲間の軌跡を追いかけて、青い光を纏うファルコンを飛ばせる。
「お願い、アイレ」
信頼する『家族』の翼はドロシーを掠め、与えられた力は、少女の顔を綻ばせた。
「トエリカちゃん、ありがとー!」
振りぬいた腕で、手を振ったドロシーへ、どういたしましての変わりに微笑を返したが、抉った敵がまだ倒れずに居るのを認め、はっとしたように声を上げる。
「ドリー、後ろ!」
その声は、ドロシーを振り返らせるには遅かった。
しかし、ふわりと柔らかなドロシーの髪が鋭く一閃するには、十分だった。
自身の腕と変わらぬ力強さで、握った斧を振るったその髪は、ふふーと不敵に笑って見せるドロシーの心情を表すかのように、跳ね揺れる。
「ドリーは甘くないよー」
背後を狙ってきた敵を両断し、誇らしげに笑う顔を見て、棍を手に一歩踏み出したトエリカの足は、元の位置に納まる。
だが、ほっと胸をなでおろしたような顔で一度だけ足元を見つめると、再び、踏み出した。
「――ここは、お願いね」
誰へ、ともなく。言葉を残し、トエリカは超えさせないと決めた一線を、自ら踏み越え前線へ駆けた。
手元で高速回転する棍は、縦横無尽に振るわれる狼の爪を払い退け、がら空きの胴に強烈な一撃を見舞う。
そうして、くの字に折れた体躯が岩壁に叩きつけられ、そのままずるりと動かなくなるまでを見届け、顔を上げた。
「怪我は、平気かしら」
「ん、平気♪ 心配してくれるトエリカの、優しさのおかげさま~でね☆」
とん、と眼前に舞い降りた姿に微笑み声をかければ、ふわりと靡いた服の裾を払い、ロゼリアは笑い返す。
平気、と言い切るには、その体は鮮烈な赤を持ちすぎていたけれど。それでも、ウインクを投げながら言えるのは、ロゼリアが言うように、気を配ってくれる仲間の存在ゆえだろう。
トエリカもまた、ふふ、と、戦場には似つかわしくないほど穏やかに笑うと、ロゼリアに背を預け、構えを取った。
「倒れさせたりなんてしないから……好きなだけ、暴れて?」
目を合わせずとも気取れる、鋭い眼差し。リズミカルに地を打つ足音でそれに応えるロゼリアの体が、ふわり、再び宙を舞った。
岩も、木も、横たわり、あるいは駆け回る、見ていられないような体躯も。何もかも、ロゼリアの動きを妨げる物ではありえない。
地の利があり、四足で身軽に走る狼よりも、軽やかに。
「さぁ、バリバリ働くわよ♪」
ひらりしゃらりと踊り翻弄する影は、ただ美しく、鮮やかで――苛烈だった。
欠片の容赦も見られない痛打が狼の首を圧し折るのを、眺め見て。鼓舞されたように、ソオラは努めて派手に、豪快に、大剣を振り回す。
その様は、もはやなりふり構えぬ狼の目にはただただ粋のいい獲物として映ったのか。我先にと奪い合うかのように飛び掛ってくる。
ぐるりと見据え、下段の構えから振りぬいた刃は、火柱を伴いながら、数匹の狼を纏めて斬り払った。
とはいえ流石に全ては裁ききれず。足に食い込む牙の感覚にきつく眉を寄せながらも、繋ぎとめたと言わんばかりに、突きたてた剣で胴を二分した。
「っ、んし……」
手応えに呟いたソオラの、頭上。
獲物の背を狙い岩場から飛び出た影は、けれどそこへ辿りつく前に、乾いた地面に叩き落された。
「あんま出過ぎてんじゃねーよ」
背後で響いたえぐい音に、思わず振り返ったソオラの視線の先、鬱陶しげに足元の躯を蹴り払ったキルフェが、不機嫌に良く似た装いで告げる。
「これでも加減はしとるでー…っと、そっちも人のこと、言えん見たいやけど?」
苦笑が捉えたのは、傷まみれの姿。滴るほどの鮮血は、己のものか、倒した狼のものか。
「たいした傷じゃねーよ」
噛み付かれた痕がありありと窺える腕を一瞥して、そう切り捨てたキルフェの視線が、ソオラの足に向かう。
それは、同意を求める視線で。肩を竦め、けろりと笑って見せた。
「お互い、あんま無茶はせんとこな。いざとなったら、わいもロア……火鳥がおるし、回復に回れるけどもな」
「……どう考えても、要らねーだろ」
皮肉げに笑った視線が、一度だけ振り返ったような気がした。けれど直ぐに、数を減らせどなお襲い来る狼へと向けなおされる。
ぐい、と首筋を流れた汗を拭い、ソオラはまた、肩を竦めて笑った。
「確かに、要らんかもしれんなぁ」
キルフェの視線が向いた先を、追いかけて。
開かれた門から溢れ出す虹色の光に、頼もしいなぁ、と呟いた。
光の出所は、魔鍵を振りかざすユーフェリア。広く遠く、しきりに巡らされる視線は、傷ついた仲間を的確に捉え、確実な癒しを与えていた。
「無茶は、禁物だよ……?」
優しさに溢れた笑顔がなんの憂いもなく回復に専念できるのは、その背を護り続けるフラウゲイルとミヤビの存在が大きい。
面識などない彼らは、それぞれの思うままに戦っているだけではある。
それでも、双翼と呼べよう位置取りで。前衛を補佐し、あるいは迎撃によって後衛を護り抜いてきた。
だがそれも、そろそろ終えて良さそうだ。敵の数は明らかに減っているし、後ろまで突っ込んでくる者にいたってはほぼ皆無。
うずうずと鞭の柄を握りなおしていたミヤビの、ちらり、確かめるように巡らされた視線が絡んだのを認めると、キーストアは口角を吊り上げて笑って見せた。
「行ってこいよ。後ろに居るばっかてのも、つまんねえだろ?」
そうして、さりげなくスピカをフラウゲイルへと向かわせる。無鉄砲といえば事足りよう戦いざまは、何を言うでもなく横目で見続けてきた。
振りぬくナイフの合間から伸ばされた爪に抉られた脇腹を、ぺたりと張り付いたスピカが慈しむように撫でていくのを、やはり、横目で見ていると。
ちらり、先ほどのミヤビのように、何かを確かめるような視線が、向けられた。
「……どうも」
「餞別代り。行くなら行けよ。早くしねえと、獲物横取りされるぜー?」
けらけらと笑って見せれば、フラウゲイルは、それ以上は何を言うでもなく駆けていき、ミヤビもそれを追いかけた。
「そういや、うちの飴好きは――」
知った顔が駆ける背を見送って、ふと、思い出したように姿を探して。程なくして見つけたその背にも、当たり前のようにスピカをけしかけた。
ぴゅーっと一直線に飛んでいくスピカは、武器やアビリティが飛び交う中を器用に泳ぎ、くりっと愛らしい瞳で件の男を見上げると、どこか嬉しそうに、飛びつ……こうとして、無造作に振られたトンファーに、一度、遮られる。
「無駄にGUTS消費させんなよなー」
緩く吊り上る唇が紡ぐ、伝える気のない台詞は、様々な音が響く戦場では、届かない。
同じく、きっと伝わる気なんてしていないだろう呟きが相手の口元で囁かれたが、届くはずも無い。
睨み付けてくる眼差しは軽く受け流して、キーストアは指先で、スピカへと再チャレンジの合図を送る。
主の指示に、気合でも入ったのか。スピカはくるくるとキルフェの周りを、半ば追い詰めるように飛びながら、とうとうその胸元に飛びついて、懐くような所作で傷を癒していった。
スピカとの格闘という、どこか愉快で滑稽で、あまりにも不毛なやり取りを、ミヤビはおかしそうに眺め、フラウゲイルは何故だか同情めいたものを感じながら見つめていたが。
「アンデッドは、俺に任せて!」
先んじて告げたミヤビの言葉に導かれるように、紫電を帯びた鞭は骨の体躯へ絡みつけば、空気は伸びた鞭と同様に張り詰める。
雷光の弾ける音は、一瞬の閃光と共に収束し、肉のこそげ落ちたアンデッドの体をがしゃりと崩した。
ぱしんっ、と小気味のいい音を立てて地を打ち鳴らした鞭は、そのまま再び、巡るミヤビの視線に合わせて敵を――アンデッドを、狙いすます。
唾液か、はたまた腐乱した肉から零れる滲出液か。毒々しくきつい匂いを放つそれが、がばりと開いた口、居並ぶ牙に纏わりついてはミヤビを襲うが、それでも彼は、頑なにアンデッドだけを狙い続けた。
「……任せた」
ぽつり、既に聞こえては居ないだろう声を、捧げて。フラウゲイルは、改めて前衛を見やる。
ふ、と。視線の先、対峙するものを威嚇するように身構える狼を見つけて。薄ら、瞳を眇めて地を蹴った。
「狼風情が、生意気だ」
反撃してやろうという気概ごと、削ぎ落とすように。鋭く一閃した切っ先は、狼の頬を掠め、さらに飛び退ろうとした前足へと、真横に朱の線を引く。
「ふわぁ、鮮やかやねぇ」
ころころと、笑う声と共に紡がれた言葉に、フラウゲイルは一瞥するだけのつもりで視線をやって。
その一瞬で認めたものを確かめるように、どこか急いた顔で、振り返った。
「馬鹿、余所見をするなと……!」
毒に侵されているのだろう顔は、それでも白粉が蒼褪めた色を隠し、艶やかな赤紫の着物は翻るほどに傷をごまかす。
それでも迸る血の匂いは、獣を引き寄せるのだろうか。
かけた声は、疲労を紛らわせる一休みのつもりで居たのだろうけれど。
返された声に咄嗟に応じることが出来ない程度には、限界だった――。
ひらり、メイの手元、中空を踊る花弁のように滑る扇が、ヒュプノスを導くように向けられる。
「ネム、彼らに安らかな眠りを――」
けれどその指示は、肩口で小首を傾げた星霊に届くことは無く。
かすかに、それでもはっきりと見開かれた瞳と共に翻された扇の舞が、少女の華奢な体そのものを導いた。
「――っ、ガル!」
いつも、護られてばかりだから。
この人だけは、護ると決めていた。
半ば、飛び込むように。メイは膝を突いたガルデニアの――彼を庇うように立つフラウゲイルの傍らまで奔ると、対峙者を打ち据える。
そうして、きっ、と、儚げな雰囲気からは想像できないような鋭い眼差しで牽制すると、そろり、後ろに居る人を振り返った。
「大丈夫?」
ぽかん、と。呆けたようにメイを見つめたガルデニアは、不意に破顔し、窺うような少女の頭を、そっと撫でた。
「平気やよ。おおきにね、メイ」
駆けつけてくれたその人が、護りたい人だと言うのに、いつまでも膝を折ってはいられまい。
立ち上がり、唸り声を上げてじりじりと迫ってくる狼から庇うようにメイを抱き寄せたガルデニアは、前に立つ青年にも礼を告げると、その唇で、業火を撒き散らした。
「……いっそ、下がったらどうだ?」
無理を押したような顔は、相変わらずだというのに。呆れにも似た眼差しに、くすくす、やはり笑う声を零して。
「俺のお姫様の前だもの。見栄ぐらい張らせてくれても、いいだろう?」
そう、言うのだった。
●頑なに、ただそこに
最初から、最後まで。前で戦うと決めていた者らの疲弊は、幾らユーフェリアが傷を癒し続けようとも、拭いきれないもので。
「キルフェ、息、上がってるわよ~」
「うっせぇよ……あんたもだろが」
「一生懸命で可愛い~健気なピーちゃん、貰ったら?」
「…冗談じゃなきゃ、張っ倒してるぞ」
紡がれる軽口も、返される悪態も、お互いの意地。
下がる気はないと言葉無く訴えるその背を、横顔を、ドロシーもまた肩で息をしながら見つめては、気合を入れなおす。
腕が重いのも足が痛いのも、気のせいだ。もっと一杯傷ついている仲間が居て、もっと一杯、傷つけた相手が居るのだから。
揺れる髪は、尻尾のように少女の気持ちを表していたが、俯きかけたドロシーが顔を上げた時には、十二分の気合を示すように、ふわり、斧を掲げた。
「あとひと息ー!」
あと、ひといき。口の中で反芻して、メイは隣に立つガルデニアを見上げる。
「ガル……いける?」
「ん、問題ないよ。ユフィには、内緒ね?」
岩壁に殆ど背を預けた状態ではあるが、唇の前に指を立てて笑う仕草は、言葉通りの余裕を孕んでもいる。
内緒、と紡がれた言葉の内に篭められた感情が判るから。こくり、メイは頷きだけを返して。
「ネム――」
せめてと言うように、彼の前から敵を排除していく。
背中を追い越して跳んで行くヒュプノスを追いかけ、ナイフが閃き、棍が踊る。
ちらりと横目に見た切っ先は、刺し貫いた狼のものと、彼自身の腕から零れるものと、入り混じった赤が良く目立った。
「……貴方も、頑固なのね」
独り言に近い、小さな小さなトエリカの呟きは、けれど尋ねる意思を伴って、フラウゲイルの耳に届き。
「……頑固じゃない奴が、ここに居るのか?」
呆れたような、皮肉げな、それでもどこかに信頼めいたものを閉じ込めた答えに、変わった。
それもそうねと笑って。トエリカはまた一歩、越えさせたくない一線を広げるように、深く深く踏み込んだ。
「を、アンデッド、仕留めきったみたいやな」
「ん、バッチリ」
親指と人差し指をあわせ、まるを描いて笑ったミヤビに、ソオラは同じく笑みを返すと、ふわり、火の粉を散らして羽ばたく鳥を召喚した。
「ロア、ようやっと出番やで」
ミヤビに降り注ぐ不死鳥の羽は、勢い良く燃え盛る見た目とは裏腹に、溶け込むような優しさでその傷を癒し――彼の内側から、毒を浄化した。
「あ、ばれた?」
「あんだけアンデッド相手にしとるん見とったら、そら判るやろ」
自身の肩にも降りてきた羽の感覚を確かめるように、そっと触れたソオラは、その手を軽く握って、こつん、と額を小突く。
「あと一息、な」
「おう、あと一息!」
とん、と。同じように握った拳を合わせて、ミヤビはもう一度、歯を見せて笑った。
「あと一息、ね……」
広がるように届いた呟きを、繰り返し。キーストアはじゃらじゃらと手元で遊ばせていた鍵を、投げるように放つ。
誰も彼もが前へと走った後、性懲りも無く後ろを狙う不穏分子は、彼が捌いていた。
敵の数を何となく目で追い数え、まさかこの程度なんて言わないだろうと思案していたわけだが、流石にこうもきりが無いと、辟易してくる。
終始回復を担ってきたユーフェリアも、いい加減体力の消費が目立ってきている。
――と、再びパラダイスブリンガーを展開させようとしたその動きが、一瞬、止まった。
「……打ち止め?」
「いや……そう言うわけでは、無いんだけどね」
苦笑が見つめる先には、キルフェの姿があって。あぁ、と、納得の呟きを零したきーすとあは、くつくつ、喉を鳴らして笑った。
「彼は、いつもああなのかい?」
「さあなー……いっつも一緒とか、そういうんじゃねえし」
『ああ』とは、ほんの一瞬絡んだ視線。射抜くような眼差しは、牽制するような、敵意じみたものを孕んでいた。
はっきりとした拒絶は、キーストアにとっては心地よくすらあるものだが、聖母のような青年には、少々手厳しいものではなかろうか。
「そう……それなら、やっぱり慣れた子の回復の方が、いいのかな?」
くすくす、と。笑う声に、思わず目を丸くした。
軽い嫌味なのか、素の感想なのか、はたまた微笑ましさゆえのからかいなのか。先ほど散々スピカを嫌がった図を見てなお吐き出される言葉に、『大人の余裕』を垣間見た気がした。
そして、どんな意図を持ったものであれ、その囁きは、彼に聞かせればきっと、冗談じゃないといわんばかりの嫌悪を示してくれるだろう、台詞で。
「さあ、な……」
曖昧にごまかし、そっと隠した表情は、気に入りの玩具を取られて拗ねる子供のようだと、自嘲した。
逃げる獣は居らず、最後の最後まで、彼らはただ焚きつけられたように獲物を求めた。
それをすべて排除仕切った頃には、辺りは閑散とした装いに、凄惨な色を加えて無常を告げる。
見つめ、眺めて、見渡して。ミヤビは、なぁ、と、笑みを顰めた顔で呟いた。
「弔ってやりたいんだけど、いい?」
全てを埋めるというわけには行かないだろうけれど、野晒しにはしたくない。焼き払う形でもいいから、何かを。
願う心に、異を唱えるものは居らず。トエリカは同じ思いにこくりと頷き、そっと躯に歩み寄ると、手のひらを添えて、瞳を細めた。
おやすみなさい、と。悼む声は風に攫われて、掻き消えたけれど。
安らかにと願う気持ちは、乾いた風を優しい色に変えて、全ての躯を撫でていく。
「あ、あ、ドリー、ちょっとなら穴掘れるよ!」
はいはい、と挙手をして、獣化した腕を振るドロシーを見て、ガルデニアも少し身を乗り出したが、にこり、微笑むユーフェリアに阻まれて、そっと視線を逸らした。
「まさか、ガルが無茶をするなんて、思わなかったよ…?」
「やぁ、無茶なんてした覚えは無いけどなぁ…」
ぼそぼそと呟く口元を隠す袖を引いて、メイは自分の横へと座るよう促す。
「手伝うの、ちゃんと回復してから……」
ね。と、小首を傾げられては、聞かないわけには行かない。
ちょん、と腰を下ろして、既に手伝いに乗り出したソオラへと声をかける。
「焼くなら、手伝えるよ。後で呼んでなぁ」
「ははっ、無理せんとき。わいかて火ぐらい出せるんやからな~」
腕まくりをして、よいしょと亡骸を運び出すと、引き摺っていたはずの後ろ足が、ひょい、と持ち上げられる感覚が。
顔を上げれば、微笑むロゼリアと、目が合う。
「汚れるで?」
女性にやらせる作業でもないと思い、肩を竦めて告げるが、意味の無い言葉であることは、返答を待たずとも、判っていた。
「これくらい、洗えば済む♪ どうせ、血だらけ泥だらけ~だもの。温泉、探して入っていきた~い」
「はいはーい、それならドリー、みんなでごはん食べに行きたーい」
物凄い勢いで穴を掘っていたドロシーが振り返り、きゃあきゃあとはしゃいだ声を上げるのを聞きとめて、フラウゲイルは馴れ合うつもりは毛頭無いしと思案し、パスを告げるつもりで居たの、だけれど。
「……行く気、ねーならさっさと消えた方がいいぞ」
思案の表情から、気取られたのだろう。ひそりと彼にだけ聞こえるように呟いたキルフェの顔は、少し真剣だった。
その言葉を受けて、改めて、はしゃぐ面子を見渡す。
……なるほど、消えておかねば連行されそうだ。人付き合いが得意そうでない彼が妙に真剣な顔をするのも、納得できた。
できた、けれど。
「あんたは、行くのか?」
ずるりと、その手が引き摺るのは、狼の亡骸。台詞とは矛盾する行為に、確かめるように問えば。
「どうせ帰る頃には飯時だろ」
肩を竦めて、笑われた。
言うだけ言ってさっさと運びに行ってしまった背を見送り、一度、つまりの部分を思案するだけの間を、挟んで。
「それもそう、か……」
再びの納得と共に、亡骸へと手を伸ばすのであった。
「――これで、最後かしら」
「みてえだな。あー、だりぃ」
やれやれと言わんばかりに肩を回し、キーストアは手に付いた泥を払おうとして……てのひらを摺り合わせても滲んで広がるだけなのに気が付いて、溜息をつく。
と、そんなキーストアに、おずおずと布が差し出された。
きょとんとしたように見つめ、布を持つ手をなぞるように顔を確かめれば、じっ、と見上げてくるメイと、視線が合う。
「……手、拭く……?」
淡い色の布は、きっとハンカチだろう。女性らしい、シンプルながら可愛い刺繍のデザインを見つけると、急に、手の汚れが胴でも良くなって。
くつり、喉を鳴らしながらも、どこか優しい顔で、ひらりと手を振った。
「俺は別にいらねえよ。ガルに使ってやれって」
「…ガルも、キースに使ってあげてって……」
ちらと振り返り、ユーフェリアのお咎めという名の治療を受けているガルデニアを見やると、メイは再び、キーストアを見上げる。
「……似た者どうし?」
小首を傾げる仕草に、思わず、噴出して。
「くく……男なんて、そんなもんだろ」
撫でやりかけた手のひらをポケットに突っ込んで、帰路へと足を向けた。
積み上げられた躯は、燃え盛る火の内で、朽ちて、崩れて、灰になる。
理を違えてまで生きようとした魂が迷わぬようにか、二羽のファルコンが、立ち上る煙の周囲を旋回していた。
「そろそろ、行きましょ……」
少し先に踵を返したトエリカの促しを引き継ぐように、仲間の呼ぶ声が響く。
一度だけ、手を合わせて瞳を伏せて。
「ん、今行く!」
ミヤビは炎が灰の中に沈み込んでいくのを見届けて、踵を返した。
吹き抜けた風が、燻った火の粉を攫って。
後にはまた、乾いた大地だけが残った。
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燃え尽きた^p^
わいわーい。皆さんご参加ありがとうございました。
何かもう、敵はわしゃわしゃしてるよ、が前提でした。
前回より人数増えた分か、量は3割り増しぐらいになったけど、中身はぺらい予感しかしねぇww
アビリティの把握が出来なさ過ぎた。でへ。
特に紫煙銃。うっかりナイフばっかり使ってんのはそのせいです←←
猫さんとユフィさんが同じ場所に居続けてるからって喋りすぎな気がした。
うぃんさん宅の方々、面識あるのか悩んで、結局殆ど絡めてないんだ。しょもん。
とか何とか色々反省点もりもりだけども、まいさんはきっと懲りずにまたやっちゃう。
記事300枚に一回ペース。きっとまた来年。
何となく愉しんでいただければ幸い、です!
改めてありがとうございましたー!!
私よりメイが本当にメイらしくて、ボリュームもたっぷりで楽しかったです(*´ω`*)
普段ご縁のない方々との絡みも入れて下さって有難う御座います!
皆さんとの和やかなやり取りにニマニマ。
バトルシーンもアビリティ描写がカッコよくて…!
(数字気にしないとのことだったので普段使わないアビが日の目を見れました(笑))
そしてガルさんのピンチに駆けつけられて良かったです!
ずっと夢だった妄想が最高の形で叶いました(*ノノ)←
調子悪いのにさりげなく抱き寄せて庇ってくれるとかガルさんんん…っ!
その状態でお姫様とか言われたらっ(もだもだ)←←
サービス色々美味しかったです!
本当に有難う御座いました(^p^*)
メイちゃんと一緒にお出かけできてすっごくすっごく嬉しかったです!今度公式にどっか行きまs(業火
むしろ目標は全員絡む!だったんですが、なかなかどうして力及ばず(´・ω・`)しょも。
魔法の方々は和みパワーが半端ないと思いました。比べると、一層。
えへ、どうせ偽なんだからかっこよく見えればそれでいいじゃない!と、色々適当です。適当加減がじわじわ滲み出てる感じです(´v`)←
ガルさん助けてくれてありがとう(*ノノ)
って夢ー!?Σ(*ノノ)
なんだろう、すごく照れりゅりゅりゅ((((*ノノ)もだもだ
むしろ私のほうが堂々と俺のお姫様宣言できちゃってきゃっほーだったんですががが←
もぐもぐ。美味しく召し上がっていただければ何より(*´ω`)
此方こそありがとうございました!またぜひ!←←←
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花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
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出現率は低率の予感ですがお気軽に
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