長く伸びた影は細く。
　立ち並ぶ廃材の闇に紛れるようで、酷く儚く見えた。

　何となく顔を覗かせた場所で、彼女は声高に告げていた。
　来る闘技大会の出場。週に一度の恒例行事。喧嘩仲間を集めるような彼女の声に、その日はたまたま、乗っかってみる気になった。
　結果は、まぁ、あえて言うなら散々だった。
　対戦相手の猛攻に、一度ぐらいは底意地を見せてみたものの、飛び込んできたヒュプノスの眠りの魔力には敵わず。
　目が醒めた頃には、終わっていた。
　そして、彼女は既に居なかった。
　暢気なものだが、暫しの思案だけを過ぎらせ、一先ず、ゆっくりと眠った後の倦怠感を払うように軽く伸びをする。
　その拍子に、ずきずきと痛む体。
　そういえば魔獣の爪にばっさばっさとやられまくったなぁ、などと、ぼんやりと思案して。
　引き裂かれて穴だらけになった服に、指を通してみる。
「繕うより、作った方が早そうやねぇ」
　くすくす、笑って。
　ゆっくりと歩を進めた。

　人の気配の薄れた場所。
　放棄領域のどこか、だろう。居住者とすれ違うことさえも無かったその場所は、閑散としていた。
　星霊建築の光が徐々に色を失い、夜闇を生み始めているからか。
　あるいは、響く音が切ないせいか。
　静けさ以上に、寂しさが漂っていた。
「…………」
　廃材の影、蹲る背中を見つけて。
　一度だけ、瞳を伏せる。
　響く、音に、音に。
　ふと零れたのは、笑みだった。
「やぁ、思いっきり負けたなぁ」
　ばさり。穴の開いた、それでも華やかさを失わない着物を、彼女の頭にかけて。
　傍らに、勝手に腰を下ろした。
　痛いほどに耳朶を突いていた音は、かけた声に反応してか、小さく押し殺されたようだ。
　浮かべた笑みを更に深くして、ただ、天井を仰いだ。
　沈黙が、数瞬。
　その後には、また、切ない音が響く。
　ぐす、と小さく鼻を啜ったのを皮切りに、唇を噛み締めているのが良く判る、押し殺した嗚咽が。
　彼女のそんな顔は見たことなんてないし、これからも『見る』ことなんてない。
　けれど聞きとめた音は――言葉なく訴える彼女の声は、自分の中にも燻っていた悔しさを、掻き立てるから。
「次は、勝とう」
　告ぐ声は軽快に、爽やかに。
　頷くのを当たり前と思っているから、華やかに包まれていやに小さく見える背中を振り返る必要なんて、無くて。
　次、は――。
　もう一度、唇だけで呟いて。
　仰いだ天井を睨めつけるようにして、かすかに、かすかに、眉を寄せた。


















蒼夜冬騎 絵師









（*´∀｀）

某燕さんとの２ピンが完成しましたー。
にへら。にへら。いい感じにぼろっぼろですよ！
丁度ね、発注文考えてリクすんぞーって言ってた頃に二人で闘技場行く機会あって、思いっきり初戦負けしたので、そんな感じで捏造←
ガルさんは、女子が泣いてたらとりあえず近寄るタイプです。
勿論知ってる人限定だよ！
男子が泣いててもちょこちょこ近寄るとは思いますが。
ちなみに本人、慰めてるつもりは全くありません。
勝手に喋って、けらけら笑って、じゃあ行くねって帰っちゃう。
着物は置いてくけどね。どうせまた作るしーって。
それはそれとして。
いやぁ、本気でぼろぼろだよ。
てかガルさん、みじゅぎのときより足が出てるよ！←←←
おかしい。燕さんより露出度が高い。おかしい。
良く見たら背中も出てるし。前も全開のよう……あ、いつも通りですね。
テーマが「青春」だったので、夕暮れっぽい色合いとか、悔しそうな燕さんと清々しい感じのガルさんの表情の対比とか、とってもそれっぽくてしゅてき（*´艸｀）

絵師さんは燕さん側にセレクトしていただいた中からリクエストーのつもりでしたが、
ふと見かけた際にめっちゃ窓が全開だったから思わず発注かけた次第です。
やったねたえちゃん！（*´∀｀）
蒼夜絵師、とっても素敵なピンナップありがとうございました。
燕さんと駄鳥さんも、お付き合い頂きありがとうございましたー。