誰か――他人の手から、特別な理由もなく何かを与えられるなんて。

　唐突に差し出されたもの。それはどこにでもあるような黒い布。
　分類上カーチフと括られているものであることは、視線を落とし、しばし眺めて理解した。
　理解はしたが、目の前に差し出されている理由には、思い至らなかった。
「……何」
　怪訝な顔をすれば、相手は口端を吊り上げる。愉快げな表情に対する自分の感情は、最近、自覚できるようになっていた。
　癪に障る。
　それを口にするのもまた癪で、結局は訝るように目を細めることしかしていないのだけれど。
「んー。似合うんじゃねえの、って思って」
　よくよく見れば、布に紛れて同色の手袋が握られている手を、彼は胸の前辺りからひょいと上げ、顔の横で緩く振る。追いかけるように視線を上げれば、自然、目が合った。
「あんたが、仕事で貰ったもんだろが」
「余ってるし、使わず置いとくのも勿体ねえだろー」
　肩をすくめる仕草一つで、物語る。別に、要らないならそれでいい、と。
　そして、最初から受け取られることを期待しているわけでもない、と。
　気取った瞬間、手が出ていた。
　多分、彼の気持ちは既に諦めに向いていて、踵を返す準備まで済ませていたのだろう。唐突に手を掴まれたことに、驚いたように目を丸くしていた。
「貰っとく」
　するり、と、指の間から布の塊を抜き取り、今の今まで彼がしていたように、顔の横で緩く振って見せた。
「その内、あんたの欲しがりそーなもんで返すわ」
　それだけを告げて、さっさと立ち去る背後で。彼の纏う空気が緩んだような気がしたが、振り返って確かめるほどの興味はなかった。
　そうして、感じ取れる気配が自分だけのものになったところで、ふと、思いついたように自身の額に触れた。
　黒い手袋が触れる、黒いバンダナ。反対の手に握るそれと、よく似た飾り布。
　特別な理由があってつけているわけではない。手に入れたきっかけすら思い出せないが、いつの間にか馴染んでいた。
　似合う、とか。似合わない、とか。
　そんな価値観でないことだけは、確かだった。
　触れていただけの指でそれを掴み、払いのけるように取る。手袋も順に外し、丸めるようにして懐に突っ込んだ。長さの不揃いな髪は、軽く頭を振っただけでも疎ましく纏わりついてきた。
　必要ではないけれど、不要でもないもの。その認識が、ほんの少し、必要に傾くのを感じながら、真新しい布を纏う。
　違和感は禁じえなかったけれど、それでも、不快感に変わらないことを確かめるように、もう一度、今度は新しい手で、触れて。
「まぁ、悪かねーわな……」
　胸中に燻る不思議な感覚に、戸惑うように苦笑した。



こういう解釈で受け取らせていただきましたってゆーね。
よその子難しい。
てか勝手に書いてすまんかった。名前出してないから、別の誰かかもしれないと思っておいて。
きっとキルフェの奴、後でなんか返すもんねーかなとか探して、自分の物に対する頓着のなさに絶望したと思うよ。
ていうか私があんまりなアイテム欄に絶望した。＼(^O^)／