TW3より飴(c05383)と花(c11349)の日記跡地。
現在の主な成分:頭の可哀相な背後。よその子ごめん。仮プレ。飴花の(背後に対する)不満。たまに遊びに来る喪(c08070)と石(c28018)。力関係はPC≧PL。
+ + + + + + + + + +
雇われの用心棒。そんな肩書きで居ついた屋敷から、殺人犯として追い出されて早一年。
幸運にも出くわした旅芸人の座長に匿われ、異国の装いをした女を演じ始めてからも、同じ年。
そもそもが座長にとっても隠れ蓑のようなものだと聞いていた一座は、なるほど流れ者や訳有りの人間ばかりが多く、人の入れ替わりも激しかった。
長く居る者といえば、座長とその親友とその恋人……つまりは座長と、個人的に縁の深いもの同士だけ。
それ以外の顔は、自分が入った後に増えた、新顔ばかりだった。
つまり、は。
一座の多くの人間が、ガルデニアという存在の『素顔』を、知らなかった。
きつい香を焚いた着物をきっちりと着込み、楚々と振る舞う女顔の彼を、それそのもの、女と認識している者が、恐らくは大半だろう。
ガルデニア自身も、それを助長している節があった。元々が命がけの変装なのだから、早々気取られてはたまらないと、言い訳して。
だから、こそ。何の違和感もなかった。
ある、公演終了後の夜の、そのやり取りは。
「なぁ、二人でさ、この辺の村におちつかねぇか?」
酒の席を離れ、呼び出しを寄越した男についていけば、告げられたのはそんな言葉。
くすり、少しだけ困ったような顔をして微笑んで、首を傾げて見せた。
「それ、どういう意味?」
「あー…だから、さ、まぁなんだ、今すぐって訳でもねぇからさ、一緒にならねぇか、って……ほれ、今なら丁度、公演終わって切りもいいだろ」
「あはっ、そないなこと聞いてへんよ。何を、思って、うちにそう言うこと言うてるん、て、聞いてるんよ」
笑った拍子に揺れた白髪は、夜闇に紛れてなお、艶やかに映える。掬い上げてみればそれは間違いなく白を纏っているのだが、光の下では時折銀糸にさえ見えたものだ。
きらきらとした輝きに、一瞬、あてられたように。男は躊躇いがちに頬を掻き、頭を掻き、うなるような声を何度も零してから、意を決したように視線を合わせてきた。
若い、男だった。成人したばかりの、輝かしい未来を持った青年。鍛えられた肉体と不精髭が少し年上に見せるが、自分よりも年下であることは、入ったばかりの頃に認識していた。
「好き、なんだよ。なぁ、付き合ってくれねぇか?」
ぶっきらぼうな低音が告げる言葉は、真っ直ぐで、胸中に心地よく響いた。
けれど。
けれど。
聞きたくなどない、言葉だった。
「あんなぁ……うち、多分シアの期待には応えれんよ」
彼が自分をどんな目で見ているかぐらいは知っていた。
彼にとって、自分は、未だ、女なのだ。
そんな認識に対して、男と明かすことはしたくなかった。可哀想とか、そんな感情ではない。ただ、ただ、気取られぬままでいたいとう、我侭だ。
勿論、一世一代の告白をした男にとっては曖昧なごまかしで納得できるはずもなく。切実な面持ちで繰り返す。
「何だよ、期待って……俺は、毎日お前を見てて、それで……」
「うちはシアを好きになれん。そう言うたら、諦めてくれるん?」
「っ……ほ、本気で、言ってねぇだろ、それ……」
食い下がろうと必死な男を、真っ直ぐに見つめて。薄ら、哀れみにも似た眼差しを湛えると、くつり、喉を鳴らして笑った。
「嘘でも、本気でも、変わらんやろ」
例えば。囁くほどの声が、それでもどこか力強く、夜の静けさを裂く。
「本気でそう思っとれば、望み一つない。その場しのぎの嘘でも、同じ。言わせるだけの理由があるんやて、判るやろ」
突き刺すような棘を孕んだ言葉が、男の純粋な心を抉る。
気圧されたように息を呑み、唇を噛んだ姿を見て、ガルデニアは、ふと、先とは一転した、柔らかな表情を作った。
「うちは、ここを離れたない。やから、諦めて」
しん、と。急な静寂が、二人を取り囲む。気まずさを覚えているのは、男だけだろう。言いよどむように唇を開閉させ、どこか生気の抜けた顔を上げると、ポツリと、呟いた。
「……ガル、お前やっぱ、座長のこと……」
ぴくり、と。絶えず笑みを浮かべ、緩やかな空気を纏っていたガルデニアの表情が、一瞬だけ強張った。
「アギラは関係ない」
「それこそ、嘘だろ。じゃなきゃお前ほどの女がこんな……」
「シア。それ以上言うたら怒るよ」
ぴりぴりと張り詰めた空気を放ちながらの制止に、男はやはり気圧されたように唇を噤んだが、苦々しげに、呟いた。
「嘘でも、そう言ってくれた方が諦められるんだよ……」
悪戯を咎められた子供のように、あるいは、雨に打たれた子犬のように。項垂れて、力なく瞳を伏せた男の姿を、見つめて。
零れたのは、溜息だった。
「うちは、アギラのこと好きやよ」
恩人として、感謝している。
続く言葉を伏せた一言は、偽りない本音であり、同時に、その場しのぎの嘘だった。
だが、それを受けた男は、一度だけ、泣き出すのを堪えるようにきつく眉を寄せ、それから、笑った。
「そうか、じゃあ、しかたねぇな」
それきり、目を合わすこともしないまま、駆け去った。
あぁ、また、人が減るのだろう。
振り返りもしないまま、ガルデニアはひそり、顔を顰めた。
今までも、何人か、振った男は皆逃げるようにして一座を去っていった。
その度に座長に小言を言われるが、慣れたものだ。彼自身もさほど咎める意識がないのだから、なお。
「うちに自由のない愛なんて要らん」
女の姿は窮屈でもあるが、謂れのない罪の纏よりもマシだ。
例えばどんなに恋焦がれていようとも。無闇に明かすことで、今の生活が失われるのならば、突き放した方がよほどいい。
「早ぉ、自由になりたいなぁ……」
何を以って『それ』と呼ぶのか、既に、判らなくなってきていたけれど――。
----------------------
天啓貰うまではとにかく隠れることに一生懸命だったり。
エンドブレイカーになって色々理解してからは、なんだやっぱ別に悪いことしてないじゃんもういいよな感じでオープンに。
女の振りは変わらないけど、断り方が「うち男やけどそれでもええの?」になった。
それでもいいよと言われても、結局は「うちが良くない」ってお断りしてきたけれども。←
幸運にも出くわした旅芸人の座長に匿われ、異国の装いをした女を演じ始めてからも、同じ年。
そもそもが座長にとっても隠れ蓑のようなものだと聞いていた一座は、なるほど流れ者や訳有りの人間ばかりが多く、人の入れ替わりも激しかった。
長く居る者といえば、座長とその親友とその恋人……つまりは座長と、個人的に縁の深いもの同士だけ。
それ以外の顔は、自分が入った後に増えた、新顔ばかりだった。
つまり、は。
一座の多くの人間が、ガルデニアという存在の『素顔』を、知らなかった。
きつい香を焚いた着物をきっちりと着込み、楚々と振る舞う女顔の彼を、それそのもの、女と認識している者が、恐らくは大半だろう。
ガルデニア自身も、それを助長している節があった。元々が命がけの変装なのだから、早々気取られてはたまらないと、言い訳して。
だから、こそ。何の違和感もなかった。
ある、公演終了後の夜の、そのやり取りは。
「なぁ、二人でさ、この辺の村におちつかねぇか?」
酒の席を離れ、呼び出しを寄越した男についていけば、告げられたのはそんな言葉。
くすり、少しだけ困ったような顔をして微笑んで、首を傾げて見せた。
「それ、どういう意味?」
「あー…だから、さ、まぁなんだ、今すぐって訳でもねぇからさ、一緒にならねぇか、って……ほれ、今なら丁度、公演終わって切りもいいだろ」
「あはっ、そないなこと聞いてへんよ。何を、思って、うちにそう言うこと言うてるん、て、聞いてるんよ」
笑った拍子に揺れた白髪は、夜闇に紛れてなお、艶やかに映える。掬い上げてみればそれは間違いなく白を纏っているのだが、光の下では時折銀糸にさえ見えたものだ。
きらきらとした輝きに、一瞬、あてられたように。男は躊躇いがちに頬を掻き、頭を掻き、うなるような声を何度も零してから、意を決したように視線を合わせてきた。
若い、男だった。成人したばかりの、輝かしい未来を持った青年。鍛えられた肉体と不精髭が少し年上に見せるが、自分よりも年下であることは、入ったばかりの頃に認識していた。
「好き、なんだよ。なぁ、付き合ってくれねぇか?」
ぶっきらぼうな低音が告げる言葉は、真っ直ぐで、胸中に心地よく響いた。
けれど。
けれど。
聞きたくなどない、言葉だった。
「あんなぁ……うち、多分シアの期待には応えれんよ」
彼が自分をどんな目で見ているかぐらいは知っていた。
彼にとって、自分は、未だ、女なのだ。
そんな認識に対して、男と明かすことはしたくなかった。可哀想とか、そんな感情ではない。ただ、ただ、気取られぬままでいたいとう、我侭だ。
勿論、一世一代の告白をした男にとっては曖昧なごまかしで納得できるはずもなく。切実な面持ちで繰り返す。
「何だよ、期待って……俺は、毎日お前を見てて、それで……」
「うちはシアを好きになれん。そう言うたら、諦めてくれるん?」
「っ……ほ、本気で、言ってねぇだろ、それ……」
食い下がろうと必死な男を、真っ直ぐに見つめて。薄ら、哀れみにも似た眼差しを湛えると、くつり、喉を鳴らして笑った。
「嘘でも、本気でも、変わらんやろ」
例えば。囁くほどの声が、それでもどこか力強く、夜の静けさを裂く。
「本気でそう思っとれば、望み一つない。その場しのぎの嘘でも、同じ。言わせるだけの理由があるんやて、判るやろ」
突き刺すような棘を孕んだ言葉が、男の純粋な心を抉る。
気圧されたように息を呑み、唇を噛んだ姿を見て、ガルデニアは、ふと、先とは一転した、柔らかな表情を作った。
「うちは、ここを離れたない。やから、諦めて」
しん、と。急な静寂が、二人を取り囲む。気まずさを覚えているのは、男だけだろう。言いよどむように唇を開閉させ、どこか生気の抜けた顔を上げると、ポツリと、呟いた。
「……ガル、お前やっぱ、座長のこと……」
ぴくり、と。絶えず笑みを浮かべ、緩やかな空気を纏っていたガルデニアの表情が、一瞬だけ強張った。
「アギラは関係ない」
「それこそ、嘘だろ。じゃなきゃお前ほどの女がこんな……」
「シア。それ以上言うたら怒るよ」
ぴりぴりと張り詰めた空気を放ちながらの制止に、男はやはり気圧されたように唇を噤んだが、苦々しげに、呟いた。
「嘘でも、そう言ってくれた方が諦められるんだよ……」
悪戯を咎められた子供のように、あるいは、雨に打たれた子犬のように。項垂れて、力なく瞳を伏せた男の姿を、見つめて。
零れたのは、溜息だった。
「うちは、アギラのこと好きやよ」
恩人として、感謝している。
続く言葉を伏せた一言は、偽りない本音であり、同時に、その場しのぎの嘘だった。
だが、それを受けた男は、一度だけ、泣き出すのを堪えるようにきつく眉を寄せ、それから、笑った。
「そうか、じゃあ、しかたねぇな」
それきり、目を合わすこともしないまま、駆け去った。
あぁ、また、人が減るのだろう。
振り返りもしないまま、ガルデニアはひそり、顔を顰めた。
今までも、何人か、振った男は皆逃げるようにして一座を去っていった。
その度に座長に小言を言われるが、慣れたものだ。彼自身もさほど咎める意識がないのだから、なお。
「うちに自由のない愛なんて要らん」
女の姿は窮屈でもあるが、謂れのない罪の纏よりもマシだ。
例えばどんなに恋焦がれていようとも。無闇に明かすことで、今の生活が失われるのならば、突き放した方がよほどいい。
「早ぉ、自由になりたいなぁ……」
何を以って『それ』と呼ぶのか、既に、判らなくなってきていたけれど――。
----------------------
天啓貰うまではとにかく隠れることに一生懸命だったり。
エンドブレイカーになって色々理解してからは、なんだやっぱ別に悪いことしてないじゃんもういいよな感じでオープンに。
女の振りは変わらないけど、断り方が「うち男やけどそれでもええの?」になった。
それでもいいよと言われても、結局は「うちが良くない」ってお断りしてきたけれども。←
PR
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
プロフィール
HN:
飴と花
性別:
男性
自己紹介:
飴:キルフェ。不機嫌なお友達
花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
メッセ登録してみました。
出現率は低率の予感ですがお気軽に
mai-maieb@hotmail.co.jp
登録時にはメールも一緒に送ってくださると確実です
ブログ内のイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権はキルフェPLに、著作権は各絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
花:ガルデニア。ピンクの似合うお友達。
喪娘と末子も背後は一緒。
あっち女子部屋、こっち男子部屋
メッセ登録してみました。
出現率は低率の予感ですがお気軽に
mai-maieb@hotmail.co.jp
登録時にはメールも一緒に送ってくださると確実です
ブログ内のイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『エンドブレイカー!』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権はキルフェPLに、著作権は各絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
カテゴリー