だけど身じろぎすると、怒られる。
　白い床を眺め見ながら、ぽつり、尋ねた。

「ねぇ、何してんの？」

吸って、止めて。
止めて、止めて、止めて。
息苦しさに眩暈を覚えてから、吐き出して。
浅く、浅く、繰り返す。
吐息。
呼吸。
脳には送らずに、喉を通してただ吐き出すだけの、それ。
それだけで、ぐるりと巡るばかりだったものは、洗い流せた。

大丈夫。

大丈夫。

何が、だなんて。
そんな野暮な事、自分自身にだって判りはしないけれど。

……言っちゃった。

　囁いた言葉を、噛み締める。

揃いも揃って、なんなのさ。

　文句の隙間から零れたのは、笑みだった。

――奥様へ。

　手の中に、二つの欠片。

　何でだろう。おんなじ細工のペンダントなのに、一つは酷く冷たくて、一つはとても暖かい。

　並べて比べて、良く判る。

　一つは光も無いのにきらきらと煌いて見えるのに。

　一つは、反射する光沢すらない、無機質。

　なんでだろう。

　冷やされて凝り固まった無機質が、煌きに暖められて溶け出したみたいに。

　涙が溢れて止まらなかった。